- 相続税申告書の単独での申告
相続人全員で一つの申告書として申告せず、各相続人が単独で、または何人かの相続人で相続税の申告書をお亡くなりになった個人の住所地を所轄する税務署に提出することは可能です。
しかし、お亡くなりになった個人と生計を一、すなわち一緒に暮らしていたことなどお亡くなりになった個人のことを一番知っている相続人以外の相続人が単独で申告しますと、財産債務に漏れが生じ、相続税の不足額に対してその10%(その不足額が、納付した税額と50万円とのいずれか多い金額を超える場合には、15%)の過少申告加算税や遅延利息に相当する延滞税(平成29年は年利2.7%)が課されることもあり得ます。
従いまして、
(1)お亡くなりになった個人の財産債務のすべての資料、
(2)土地の評価の減額である小規模宅地等の減額を受ける土地およびその適用を受ける面積、
(3)相続税の総額から各相続人の相続税を算出するときに用いる按分割合(相続人全員の課税される金額の合計額のうちの各相続人の課税される金額の割合)の端数処理の合意(合意がない場合には端数のままで計算します。)、
(4)その他の相続人全員で申告するときに必要となる資料がある
場合のみ単独での申告をされることをお勧めいたします。
なお、相続税額が過大となっている場合には、過大分の相続税額は還付されます。
上記の(1)から(4)までの資料が必要な理由の概要は、各相続人が負担すべき相続税が、次のような過程を経て計算されるためです。
①お亡くなりになった個人に属するすべての財産の合計額
②お亡くなりになった個人に属する債務および葬式費用の合計額
③お亡くなりになった個人が土地を所有し、小規模宅地等の減額という土地の評価減の適用を受けられる対象である土地がある場合には、だれが何平方メートル適用するかという、すべての相続人の合意に基づくその評価減の金額の計算
④お亡くなりになった個人から相続または遺贈によって財産を取得した者に対して相続開始前3年前に贈与を受けていた場合には、その贈与を受けていた金額
⑤相続時精算課税制度による贈与を受けた者がいる場合には、その金額の合計額
⑥上記の①-②-③+④+⑤の金額から相続税の基礎控除額を差し引いた残額
⑦上記⑥の残額を民法の規定による割合、すなわち法定相続分によって取得したものと仮定して算出される各相続人に対して計算される各相続人ごとの相続税の合計額
(注)この相続税の総額を計算する段階で法定相続分を用いる理由は、課税の公平を図るためです。遺産分割を法定相続分で行うことを国として推奨しているわけではありません。
⑧上記⑦の合計額に上記(3)の按分割合を乗じて各相続人の相続税を算出 - 遺産の分割
最初はお亡くなりになった個人のお考えや療養看護に努めた相続人のお気持ちその他の諸事情を十分考慮して遺産の分割を行うことをお勧めいたします。なお、お亡くなりになった個人に配偶者と2名以上の子がある場合で、1名の子がその配偶者と同居しているときは、その配偶者はその同居している子により多くの財産を相続させたいとのお気持ちが強いこともあります。これらを考慮した後に残った財産については、民法の規定による相続分である法定相続分で分割するなどされると、その後の相続人間の関係上よろしいかと存じます。
相続税その他の関連する税金などが少なくなる分割方法がある場合には、その分割をご提示させていただきます。
この提示にはお亡くなりになった個人に配偶者がいる場合には、次のような情報も含まれます。①例えば今回は配偶者がすべての財産債務を相続すれば、相続税は0円。しかし、その配偶者がお亡くなりになったときは数千万円の相続税となる見込みであること。②配偶者がすべての財産債務を相続すれば、相続税が0円となる場合で、今回の相続で子が財産を取得した場合には、その子の取得した財産に対して何パーセントの相続税が課され、その配偶者がお亡くなりになった時は、何パーセントの相続税が課されると見込まれること。 - 秘密を守る義務
税理士は、正当な理由かがなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、または窃用しません。税理士でなくなっても同様です。
これに違反した場合には2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます。
根拠条文は、税理士法38条および59条1項2号です。 - 申告の方針
相続の税申告の作成方針は、申告後に税務署から問い合わせを受けなくても済むようにすることです。このため相続税の計算に必要となる書類はすべて相続税の申告書に添付します。また、税務署から問い合わせを受けそうな事項については、文書で説明を添付します。 - 必要書類
相続税の計算に必要となる書類は、申告内容によって異なります。そのためお問い合わせをいただいてからお知らせします。 - 相続税の計算に必要となる書類は、相続人からお送りいただきます。しかし、相続人のご依頼があれば、税理士が取得できるものもあります。この場合は、相続税の申告報酬とは別に手数料をご請求させていただくものもあります。
- 戸籍謄本などを税務署に提出する必要がある場合は、相続人の委任を受けて、市区町村の手数料と市区町村1か所につき1,080円の税理士報酬で戸籍謄本などを市区町村に請求して取得できます。
- お亡くなりになった個人の給与または年金の源泉所得税の還付を受けるための所得税の申告は、相続税の申告報酬に含みます。しかし、これら以外の不動産所得や事業所得などの所得税の申告報酬は、相続税の申告報酬に含まれていません。
- 相続税や相続後に不動産をご売却するときの所得税と住民税の合計額が少なくなる分割方法がある場合には、財産債務と税額のご説明の際にお知らせします。
お亡くなりになった個人の配偶者は、1億6千万円または法定相続分に対応する金額までは、相続税は0円です。しかし、その場合にはその配偶者がお亡くなりになった時に多額の相続税を納付することもありますので、その配偶者がお亡くなりになった時の相続税と今回の相続税の合計額が最小となるような分割方法をお知らせします。なお、分割は相続人間で自由にお決めなることは言うまでもありません。 - 申告報酬のお支払い
相続税の申告報酬のご請求書は、相続税の申告書の控えとお預かりしている書類と一緒にお送りします。しかし、財産の総額による税理士報酬の見込み額が60万円を超える場合には、作業時間に対応する税理士報酬が55万円超となった時に、30万円をお振り込みいただきたいと存じます。
振込手数料は振込人のご負担となります。ただし、三菱東京UFJ銀行の個人名義の口座から三菱東京UFJダイレクトのインターネットバンキング/モバイルバンキング/テレフォンバンキング(自動音声応答)でお振り込みされる場合には、振込手数料は0円です。(オペレーターが対応するテレフォンバンキングでは振込手数料がかかります。) - 税務署に提出する相続税申告書と相続人にお渡しする相続税申告書の控え
(1)税務署に提出する相続税の申告書には、相続税の計算の根拠となる書類を添付します。また、法令によって添付を要する戸籍謄本などは、市町村から取得したそのものを添付します。
(2)相続人にお渡しする相続税の申告書の控えは、税務署に提出したもののコピーに相当するものとなります。ただし、戸籍謄本のコピーは、相続人の同意を得て通常は添付しません。 - 事務所にお越しいただくことは必ずしも必要ありません。
- 税務調査
相続税の申告書を税務署に提出してから1年前後から2年後くらいまでに税務署の職員が直接、相続人からお話を伺う場合があります。この場合には税理士に連絡がありますので、相続人に場所と時間を決めていただきます。時間は平日の10時から12時までと、13時から16時ごろまでです。この場合の税理士立ち会い報酬は、相続税の申告報酬には含まれていません。 - 相続税の申告に対する税理士報酬は、個人事業者の必要経費等となりません。つまり、相続税の申告に対する税理士報酬によって、これを支払った相続人の所得税、住民税、国民健康保険料および後期高齢者医療保険料が少なくなることはありません。