お亡くなりになった個人の財産からその個人の債務とその個人のための葬式費用の合計額を差し引いた残額、すなわち下記1の金額から下記2の金額を差し引いた残額が、下記3の金額を超える場合には、そのお亡くなりになったことを知った日の翌日から起算して10か月以内に相続税の申告書をそのお亡くなりになった個人の住所地を所轄する税務署に提出しなければいけません。
しかし、相続税の申告書を提出しなければならなくても、下記5の住宅地の減額(小規模宅地の減額)や下記6の配偶者に対する税額軽減によって、相続税が0円となることがあります。
申告することによって相続税が0円となりそうかどうかは、次の順番に計算すれば分かります。
1.現金、預金、株式や住宅などお亡くなりになった個人の財産の総額
(注1)株式や土地は相続税評価額です。
概算として、上場されている株式は、現在の証券取引所での株価で計算してください。
土地は、固定資産税の通知書の課税明細に記載されている評価額に80%/70%を乗じておおまかな評価額としてください。なお、この評価額は通常、固定資産税の通知書の課税明細では課税標準の左側に記載されています。
その後で路線価が付されている土地は路線価で、倍率地域の土地は固定資産評価額に倍率を乗じて計算し直してください。
(注2)相続時精算課税制度の適用を受けた場合には、その適用を受けた金額も含みます。
(注3)お亡くなりになった個人がお亡くなりになった日から過去3年(令和10年は過去4年、令和11年は過去5年、令和12年は過去6年、令和13年以後は過去7年)以内に贈与をし、その贈与を受けた個人が相続により財産を取得したときは、その3年(令和10年は過去4年、令和11年は過去5年、令和12年は過去6年、令和13年以後は過去7年)以内に贈与を受けた金額(過去4年から過去7年以内の贈与合計額を限度として100万円を控除)も含みます。
ただし、お亡くなりになった個人の配偶者が居住用不動産を贈与されたときのその居住用不動産の金額のうち2千万円までの部分の金額は含みません。
(注4)お亡くなりになった個人の死亡を原因として生命保険金が支払われた場合で、その死亡した個人が生命保険料を負担していたときは、その生命保険金も含みます。
ただし、その死亡した個人の相続人が取得した保険金の合計額のうち、500万円に相続人の数を乗じた金額までの部分は含めないでください。
(注5)お亡くなりになった個人が保険料を負担していた生命保険契約で、まだ保険事故が発生していない生命保険契約に関する権利は、お亡くなりになったときに解約するとした場合に支払われることとなる解約返戻金、前払保険料および契約者配当金の合計額を含みます。
(注5)お亡くなりになった個人の家族名義の預金であっても、そのお金の出所はそのお亡くなりになった個人であり、その通帳と印鑑もそのお亡くなりになった個人が管理していたもの、いわゆる名義預金も含みます。
2.お亡くなりになった個人の未払金、借入金と葬式費用の合計額
(注)お亡くなりになった個人が債務を保証していた場合で、お亡くなりになった日にその保証の履行を求められていないものは含みません。
3.相続税の基礎控除額
(1)平成26年12月31日までにお亡くなりになったときは、5,000万円+1,000万円×お亡くなりになった個人の相続人の数
(2)平成27年1月1日以後にお亡くなりになったときは、3,000万円+600万円×お亡くなりになった個人の相続人の数
相続人の数 は次の場合の区分に応じたそれぞれの区分ごとの人数です。
(1)お亡くなりになった個人の子とお亡くなりになった個人の配偶者の合計の数
子が既に亡くなっている場合、またはお亡くなりになった個人と同時に死亡した場合は、子の子、つまりお亡くなりになった個人の孫の人数を含みます。
(2)上記(1)の子がいない場合は、お亡くなりになった個人の父母とお亡くなりになった個人の配偶者の合計の数。
父母が既に亡くなっている場合、またはお亡くなりになった個人と同時に死亡した場合には、祖父母の人数を含みます。
(3)上記(1)と(2)に該当しない場合は、お亡くなりになった個人の兄弟姉妹とお亡くなりになった個人の配偶者の合計の数。
兄弟姉妹が既に亡くなっている場合、またはお亡くなりになった個人と同時に死亡した場合には、その兄弟姉妹の子、すなわちお亡くなりになった個人のおいやめいの人数を含みます。
(注1)相続の放棄があった場合は、その放棄がなかったものとした場合の相続人とします。
(注2)お亡くなりになった個人に養子がある場合は、次の①または②の数を含みます。
①お亡くなりになった個人に実子がある場合または実子がなくて養子が1人である場合は、1
②お亡くなりになった個人に実子がなく、養子が2人以上である場合は、2
(注3)上記(注2)の養子につきましては、次の③と④を養子ではなく、実子として取扱います。
③民法817条の2第1項の特別養子縁組による養子、お亡くなりになった個人の配偶者の実子でそのお亡くなりになった個人の養子となった者、お亡くなりになった個人とその配偶者との婚姻前にそのお亡くなりになった個人の配偶者の特別養子縁組による養子となった者で、その婚姻後にそのお亡くなりになった個人の養子となったもの
④実子もしくは養子またはその直系卑属が相続開始以前に死亡し、または相続権を失ったたため民法による相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)となったその者の直系卑属
4.上記1から2および3を差し引いて得られる数字、すなわち「1-2-3」の数字が
(1)0またはマイナス、すなわち「1-2-3 ≦ 0」のときは、相続税の申告は不要です。
なお、明らかにマイナスとなるときを除いて、お亡くなりになった日の翌日から5年10ヶ月間は、このように計算されたことを証明する書類などを保存してください。
明らかにマイナスとはいえないときは、メールまたはお電話でお問い合わせいただければ、無料で計算させていただきます。
メールでのお問い合わせは、この行をクリックしてください。
お電話でのお問い合わせは、03-3358-1495におかけください。
(2)プラス、すなわち「1-2-3 > 0」のときは、相続税の申告が必要です。
5.住宅地の減額(小規模宅地の減額)
上記4.(2)の場合、すなわち「1-2-3 > 0」の場合で、次の(1)と(2)を差し引いた金額が0以下、すなわち「1-2-3-5.(1)-5.(2) ≦ 0」のときは、相続税の申告書は税務署に提出しなければいけませんが、相続税は0円となります。
(1)お亡くなりになった個人またはその個人と生計を一にしていたその個人の親族が居住していた宅地や借地権で、その配偶者が取得したときは、その宅地や借地権のうち240㎡までの価額×80%
なお、平成27年1月1日以後にお亡くなりになったときは、240㎡に代えて330㎡となります。
(2)お亡くなりになった個人の不動産貸付業に供されていた宅地や借地権があるときは、その宅地や借地権のうち200㎡までの価額×50%。ただし、
①平成26年12月31日までにお亡くなりになった場合は、5.(1)の面積×5/3+5.(2)の面積×2 ≦ 400㎡です。
②平成27年1月1日以後にお亡くなりになった場合は、5.(1)の面積×200/330+5.(2)の面積 ≦ 200㎡です。
(注5)上記5.(1)(2)は代表的な例であり、これら以外でも減額が受けられることがあります。下記7.参考をご覧ください。
(注6)お亡くなりになった個人の事業などに供されている場合のご説明はしていません。
(注7)相続税が還付される場合のご説明はしていません。
(注8)上記4.(2)、すなわち「1-2-3」に対する相続税額が、住宅地の減額によって減少する相続税額です。
6.配偶者に対する税額軽減
「1-2-3-5.(1)-5.(2) > 0」であっても、配偶者が取得した金額が1億6千万円以下、または上記の1から2を控除した残額、すなわち(1-2)にその配偶者の法定相続分を乗じて得られる金額以下である場合は、その配偶者の相続税は0円となります。
ただし、その配偶者がお亡くなりになった時に多額の相続税を納付することもありますので、その配偶者がお亡くなりになった時の相続税と今回の相続税の合計額が最小となるような分割方法をお知らせします。なお、分割は相続人間で自由にお決めになることは言うまでもありません。
(注9)配偶者の法定相続分は、相続人が配偶者と子である場合は2分の1です。
(注10)「1-2-3-5.(1)-5.(2) > 0」である場合で、配偶者以外の相続人が財産を取得しているときは、その配偶者以外の相続人には相続税が生じます。
(注11)この6によって減少する金額が、配偶者に対する税額軽減によって減少する相続税額です。
7.参考
平成27年(2015年)1月1日以後にお亡くなりになった個人、すなわち被相続人に適用される小規模宅地等の減額の概要は、次の表の通りです。適用できるかどうかは、法令や通達で詳細に検討することを要します。
なお、小規模宅地等の減額は、申告すべき期限に分割されていない土地等であっても、その申告すべき期限から3年以内(税務署長の承認を受けた場合には、分割できる日の翌日から4月以内)に財産の取得者が確定、すなわち分割されているときは、申告すべき期限を経過後に提出する期限後申告であっても適用を受けられます。
相続開始時の現況 | 取得者 | 対象部分 | 減額割合 | 減額対象地積 |
被相続人の居住用(注1) | 被相続人の配偶者 | 相続部分 | 80% | 330㎡ |
被相続人の居住の用に供されていた1棟の建物に居住していた親族で、申告期限まで所有し、居住する者 | 区分所有建物の被相続人の居住部分 | |||
上記以外の被相続人または被相続人の親族の居住部分 | ||||
上記に該当しない場合で、相続開始前3年以内に①自己またはその配偶者、②3親等内の親族、または③所定の法人が所有する家屋に居住していない者で、お亡くなりになった時に居住していた家屋を所有していたことがなく、申告期限まで所有する者 | 相続部分 | |||
被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住用 | 被相続人の配偶者 | 相続部分 | ||
被相続人と生計を一にしていた親族で、申告期限まで所有し、居住する者 | ||||
被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業以外の事業用(注4) | 申告期限まで所有し、事業に供する者 | 事業に供されていた部分 | 400㎡ | |
同族会社の事業に供されていた部分 | 400㎡ | |||
被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付用 | 申告期限まで所有し、事業に供する者 | 貸付事業に供されていた部分(注5) | 50% | 200㎡ |
(注1)
次の(1)または(2)の理由から、お亡くなりになる直前に被相続人が居住していなかった場合には、次の(1)または(2)の理由に該当する直前に被相続人が居住していたことを含みます。
ただし、事業の用または被相続人と生計を一にしている親族、もしくは被相続人と生計を一にし、かつ、その居住用の建物に引き続き居住しているその被相続人の親族以外の者が居住の用に供しているときを除きます。
(1)要介護認定、要支援認定または厚生労働大臣が定める基準に該当する介護保険の1号被保険者が、次の住宅または施設に入居または入所をしていたこと。
①認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、または有料老人ホーム
②介護老人保健施設
③サービス付き高齢者向け住宅
(2)障がい支援区分の認定を受けていた被相続人が、障がい者支援施設(施設入所支援が行われるものに限ります。)または共同生活援助を行う住居に入所または入居していたこと。
(注2)削除
(注3)削除
(注4)
2019(平成31)年4月1日から2022(令和4)年3月31日までにお亡くなりになった場合は、2019(平成31)年4月1日以後に新たに事業の用に供された土地および借地権を除きます。
2022(令和4)年4月1日以後にお亡くなりになった場合は、お亡くなりになる前3年以内に新たに事業の用に供された土地および借地権を除きます。
ただし、その土地および借地権の上で事業の用に供されている建物、構築物および事業に供されている機械などの減価償却資産の価額が、その土地および借地権の相続時の価額の15%以上である場合には、対象となります。
また、お亡くなりになった個人がお亡くなりになる前3年以内に相続または遺贈によって事業用宅地等を取得し、かつ、その取得の日以後その宅地等を引き続きその事業の用に供していた場合のその宅地等は、新たに事業の用に供された宅地等に該当しません。
(注5)
平成30(2018)年4月1日から平成33(2021)年3月31日までの間に相続または遺贈により取得する場合は、平成30(2018)年4月1日以後に新たに貸付けられたものを除きます。ただし、相続開始の日まで3年を超えて引き続き事業的規模、すなわち1棟を2室と換算して10室以上賃貸しているときなどは、対象となります。
平成33(2021)年4月1日以後に相続または遺贈により取得する場合は、相続開始前3年以内に新たに貸付けられたものを除きます。ただし、相続開始の日まで3年を超えて引き続き事業的規模、すなわち1棟を2室と換算して10室以上賃貸しているときなどは、対象となります。
上記のうち、「被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業以外の事業用」以外に該当する場合には、申告することによって相続税が0円となる場合の税理士報酬をご覧ください。
それ以外の場合には、相続の税申告の税理士報酬をご覧ください。